マイクのアイコンインタビュー

ジーンシアターでコメディ短編映画3本を配信している田中健詞監督にコメディ映画のつくり方やインディーズ映画の将来について伺った

2023年1月19日

GeneTheater Interview #6

映画監督

田中 健詞 | Kenji Tanaka

ロケ地にこだわって制作されたコメディ映画『佐渡頭探検隊 当たって砕ける』

──まずは『佐渡頭探検隊 当たって砕ける』についてお伺いしたいと思います。『川口浩探検隊』や『インディ・ジョーンズ』といった作品のパロディ風な雰囲気が面白くて、私は声をだして笑ってしまいました。この作品はどういった経緯で生まれたのでしょうか?

以前、「鉄ドン」というおバカ映画だけを集めたオムニバス企画がありまして、この作品は「鉄ドン」に持ち寄るために制作したものでした。ストーリーは、ランプの精のお話をとことん馬鹿っぽくできないかなと思い、さらにそこに探検モノの要素を入れました。探検モノを表現するのにインディ・ジョーンズっぽいハットをかぶせました。

──制作にあたって特にこだわった部分はどういったところでしょうか?

一番はロケ地ですね。もともと撮影に使いたいなと思っていた鍾乳洞があったのですが、いざロケハンに行ったら小雨が降っただけでも立入り禁止になってしまうことが判明して、これは撮影の許可を取るのも一筋縄じゃいかないだろうなと思い、断念せざるをえなかったのです。他にも昔CMの撮影で使ったことのある東条湖近くの川も候補だったのですが、当時干ばつ状態で水が干上がっていたので、やはり撮影できない。それで新たにロケ地を探すことになって、カメラマンが高槻市に住んでいたのでその周辺で探していたら、ちょうどいい感じの渓流があったのでそこで撮ることになりました。ぱっと見だと山奥の渓流みたいに見えるのですけど、あそこから5分ぐらい歩くと普通の道路に出るのですよ。

──冒頭に主人公が川に落ちるシーンがありますが、昔ながらの特撮のような雰囲気を感じました。あのシーンはどうやって撮影したのでしょうか?

あれはまずドローンを使って、河原を上から撮影し、人物の方は普通の公園の滑り台の上に登ってそこからカメラを構えて、落下しているところを上から撮影している風に見せています。低予算だったのでグリーンバックの代わりに工事用のブルーシートを使って、ブルーバックで合成しました。

短編映画紹介

『佐渡頭探検隊 当たって砕ける』(5分30秒)の視聴はこちらをクリック >> 『佐渡頭探検隊 当たって砕ける』

ストーリー

少しドジな隊長が率いる、探検隊員たち。深い山奥で彼らが懸命に探すお宝、それはラジー石。噂ではその石の中に全知全能の神「ネムール」が封じられており、どんな望みでも叶えてくれるのだという。
道中さまざまなピンチを乗り越え、ようやくお宝の元へたどり着いた彼らは、なんとかネムールを起こすことに成功する。神が言った。「なんでも願いを叶えてあげるとしよう。その代わり、叶える願いは1つ…」果たして、彼らは何を望むのか…!?

『翔んだカップル』で一世を風靡したコメディアン・轟二郎の遺作となった『最新最終兵器』

──次に『最新最終兵器』について伺いたいと思います。『佐渡頭探検隊』に続いてコメディ映画となっていますが、轟二郎さんの起用にはとても驚きました。

これも『鉄ドン』のために制作した作品です。『大怪獣チャランポラン祭り 鉄ドン』という怪獣くくりの企画で、馬鹿っぽい博士がいると面白いなと思った瞬間、「轟さんに出て頂けないだろうか」とパッと考えついたんですよ。もちろん面識はありませんでしたし、オファーしても断られるだろうなと思いつつ、聞いてみないことには始まらないからと轟さんのブログからコンタクトを取りまして。直接お会いしに行った際「とにかくバカっぽいことをやりたいのです」と話したら、出演を快諾してくだいました。

──轟さん演じる博士の一人称が『ボキ』であるところなど、『翔んだカップル』をリアルタイムで見ていた世代の人間からしたらたまらないものがありました。

その『ボキ』にまつわる裏話を教えてもらったのですが、あれはもともと台本の誤植だったそうなんですよ。それを本読みの時に轟さんが「ボキはね…」って言ってみたら、演出の人が「そっちの方が面白いから『ボキ』でいこう」って決めて、それであの特徴的な一人称が生まれたという。この作品では最初から脚本上で『ボキ』と書かせてもらいました。

短編映画紹介

『最新最終兵器』(3分55秒)の視聴はこちらをクリック >> 『最新最終兵器』

──轟さんは2020年に亡くなられてしまいましたね。

恐らくこれが映像作品としてラストだと思いますね。実は轟さん、亡くなる数年前に脳梗塞を発症していたそうなのです。はじめてお会いした時も「下半身が不自由で、走ったりするシーンはできないけどいい?」って聞いてくださって、それでも是非お願いしますって言って出演してもらいました。ただ博士が怪獣に向かって前進するシーンがあったので、どうやって演出しようかと考えた結果、台車に乗ってもらうっていうのを思いついて。「轟さん、台車に乗ってもらっていいですか?」って聞いたら、快くOKしてくださいました。本当にいい方でしたね。

コメディ映画を演出するにあたってのこだわり

──『佐渡頭探検隊』『最新最終兵器』のどちらも、会話の間やカットの切り替わりなどのテンポが軽妙で、つい笑ってしまうようなことが多々ありました。

『佐渡頭探検隊』については、僕の想定ではもう少し間が長めだったのですけどね。ただ鉄ドンに「作品時間は3分半」という決まりがあったので、その時間に収めようとした結果、今のような速めのテンポになってしまいました。ただコメディ、特にドタバタコメディっていうのは、テンポが速くて軽快な方がやっぱり面白いと思います。

──他にもコメディ演出でこだわった点はありますか?

『最新最終兵器』では怪獣を倒すための地球防衛軍が登場するのですが、こいつらが全員へっぽこなんですよね。じゃあそのへっぽこぶりをどう描くかというと、隊員を全員だらしない体型のおじさんにするという方法を取りました。だからキャスティングにはある意味苦労しましたね(笑)。特に衣装を揃えるのが大変で、隊員役の1人は一番大きい7Lサイズの衣装が入らなくて、仕方なく腰で巻いてもらって何とか撮影にこぎつけました(笑)。

──コメディ映画を撮影する際は、事前にプランをしっかり練ってから現場で演出していくのでしょうか?

そうですね、僕の場合は事前に絵コンテを全カット分描いて、「ここで笑ってほしい」という狙いをしっかり決めておいて、緻密に計算しながらつくっています。だから狙い通りにちゃんと笑ってもらえるかどうかは、とても気にしています。以前『パンチメン』という長編映画を制作した時に、自分としてはものすごく面白いと思っているシーンと思っていたのに、観客からはあまり笑いがおこらないことがあって、「あれ、おかしいな…」と思ったり(笑)。ただそのシーンで、友達が連れてきた6歳の子供だけはゲラゲラ笑ってくれてた、なんてこともありました。

CM制作会社に入社後、14年ぶりの自主映画制作へ

──続いて田中監督のキャリアについて伺いたいと思います。最初のキャリアは東映CM株式会社に入社したところから始まるのですね。

はい、今でもCM制作の仕事は続けています。でも僕は最初、本当は映画がやりたかったのです。ただ入社当時はバブルの真っ最中だったのですが、色々な業界が元気だった中で映画業界はあまり元気がなくて、映画の道に進んでも食べていけないなと思いまして。同じ映像の仕事でもCMは廃れないだろうなと思って、CMの制作会社に入社しました。

──その後に短編映画を監督していらっしゃいますが、どういったきっかけで映画制作をすることになったのでしょうか?

当時CMの仕事をしている中で、別所哲也さんと知り合いまして。別所さんが『アメリカン・ショートショートフィルムフェスティバル(現・ショートショートフィルムフェスティバル&アジア)』を立ち上げた時、最初は海外から面白い作品を持ってきて上映する場だったのですが、そのうち日本でつくったショートフィルムを発表していく場になっていったのですね。そこで「プロの映像人がつくるショートフィルムが見てみたい」ということで別所さんから声をかけていただいたのがきっかけです。大学で8ミリ映画を撮って以来、14年ぶりの映画制作でした。

──もともとは映画を撮りたいと思っていたのに、14年間もつくらなかったのはなぜでしょうか?

一番は機材の問題ですね。当時は自主制作で映画を作るとなると、カメラは8ミリフィルムか家庭用ビデオくらいしか選択肢が無かったのです。でもプロとして映像制作の仕事をやっていると、プロ仕様の機材で仕上げた高品質な映像を日常的に目にするので、なおさら自主制作レベルの機材の環境には戻れなくて…。ただちょうど声がかかった時、パナソニックからAG-DVX100というカメラが発売されたのですが、このカメラを使えばフィルムで撮ったような質感の映像を撮影できたのです。これなら工夫次第でちゃんとした映画になるな、と思えたので、14年ぶりに映画制作に踏み切りました。

──実際に14年ぶりの映画制作はいかがでしたか?

当時僕が制作した映画は13~14分くらいの尺だったのですが、ストーリーの中に起承転結を全部入れ込んでいたのです。ただ実際に受賞した作品とかを見て気付いたことがあって、短編映画のストーリーに起承転結の全てを入れ込む必要はないなと思いました。起・承・結がなくて転だけがあってもいいし、オチがなくても全然構わない。せっかくの映画制作なのだから、型にとらわれずもっと自由に楽しめばよかったな、とその時思いました。

映画の最終着陸点とは インディーズ映画で収益を得るための方法

──次にインディーズ映画について伺いたいと思います。インディーズ映画の大半は収益化がなかなか難しいのが実情ですが、田中監督が映画制作をするにあたってのモチベーションは何でしょうか?

僕としては、最終的にちゃんとお金になるようなものにしたい、という気持ちでつくっています。ただそれは短編映画では難しいですよね。そういうこともあって個人的には、短編映画は自分のサンプルだという気持ちでつくっています。自分の考えや引き出しの中を伝えるため、自分を見てもらうためのサンプル。だから同じことを2度はしたくないですね。前回自分のこんな一面を見せたから、次は別の一面を見せよう、みたいな。

──インディーズ映画で収益を上げていくためには、どうすればいいと思いますか?

メジャー映画のように映画館で上映することで収益を上げる、ということは難しいと思います。インディーズの規模だと、用意できるキャパシティも多くて100人規模ぐらいですし、しかもその席すべてが埋まるとは限らないので。ただ今は配信の時代ですから、わざわざ映画館で上映しなくても世界中の人に見てもらえるのはいいですよね。僕の友人の監督に、動画プラットフォームで作品を配信することで収益化している人もいるので、インディーズ映画でお金を稼ぐこと自体は不可能ではないと思います。

──映画館で上映することが、映画の最終着陸点という時代ではなくなっている、ということですね。

そうだと思います。とはいえ、自分の作品が映画館で上映されるのはやっぱり嬉しいです。作品に携わってくれたスタッフやキャストに報いることができたというか、責任を果たせたという気持ちにはなります。ただ現実的なことを考えると、収益を上げるためには結局入ってくるお金を増やさないとだめですから、そうなると客数が限られている映画館で上映するよりも、より多くの人に見てもらえる可能性がある配信の方がいいのではないかな、と思います。

「力のない映画監督は淘汰されていく」 生き残るために何をすべきか?

──田中監督は映像業界に身を置いていらっしゃる方ですが、インディーズ映画界隈を業界全体で見た場合、どのように思われますか?

今は機材が発達して、ボタンを押せば誰でも綺麗な画が撮れる時代になりましたよね。僕が自主制作を始めたばかりの頃と比べて、映画監督を名乗る人の数が恐らく1000倍とか2000倍レベルに増えてきていると思います。ただこれだけ映像制作をする人の数が増えていくと、映像を『魅せる』力のない人は淘汰されていく。人に見てもらうことを意識して、テクニックを駆使して作品のクオリティを上げられる人と、それができない人とではっきりと住み分けされていく、と思います。

──その中でインディーズ映画の監督が生き残っていくためには、どうすればいいのでしょうか。

僕は実際に映像制作の現場に立つことでテクニックや立ち回りを勉強していったタイプなので、やはり現場を知ることが大切なんじゃないかな。伝わるだろうと思って脚本に書いたことが現場ではなかなか伝わらないことだとか、どのスタッフがどんな仕事をしているかとか、映像をつくるうえで避けては通れない様々なことを知っておくと、自分の作品をつくる時に役立つと思いますね。そういった地道なステップアップを飛び越すような才能の持ち主が現れる、なんてこともあると思います。今まで映像制作をしてきて、なかなかうまくいかないなと思っているような人は、ぜひ現場を体験してみてほしいです。

──そんな悩める映画監督、もしくは監督志望の人に向けて、何かアドバイスはありますか?

一度、自分が大好きな映画をそっくりそのまま、真似してつくってみてください。自分だけのオリジナルの映画にはならないですけど、元の映画と全く同じということにも絶対になりませんから。そうしたら「自分が作った映画と、元の映画になんの違いがあるのか」ということを考えてみてほしい。その差を埋めていくことが上達のコツだと思います。

田中 健詞

Profile

田中 健詞 | Kenji Tanaka

東映CM株式会社、株式会社ハイスクール(現アマナ)、株式会社電通クリエーティブXへと移り、TVCM・VPの企画・演出・プロデュースに携わる。2014年1月、独立
日本映画監督協会会員

プロフィール詳細はこちら

鉛筆のアイコンインタビュー後記

長年、映像業界に身を置いていた田中健詞監督の言葉はとても説得力がありました。そして熱量や映画愛を強く感じました。インタビューも一度終了して雑談に入っても熱く語っていただいたので、急遽、インタビューを再開。この記事にもできるだけ盛り込みました。

インタビュアー

井村 哲郎 | Tetsuro Imura

以前編集長をしていた東急沿線のフリーマガジン「SALUS」(毎月25万部発行)で、三谷幸喜、大林宣彦、堤幸彦など30名を超える映画監督に単独インタビュー。
その他、テレビ番組案内誌やビデオ作品などでも俳優や文化人、経営者、一般人などを合わせると数百人にインタビューを行う。
自身も映像プロデューサー、ディレクターであることから視聴者目線に加えて制作者としての視点の切り口での質問を得意とする。

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